昭和48年10月、森町・三島神社に大横笛を奉納した際の初代会長・鈴木文夫による口上文です。肉声が収録された音声動画と合わせてご覧ください。
森町常磐会です。
私たちの会は、何時如何なる時に於いても、会則・綱領でもうたわれているように、和によって結ばれている会です。
一稈の竹を通して流れる清らかな芽のように、お互いに和し合い生まれた喜びを分かち合って、清らかに生きていこうとする集いです。
そして、この集いが結成されて丁度今年で三周年になります。この三周年を記念して、鎮守の森・三島神社に大横笛を奉納しようと、全会員の気持ちは一つにまとまりました。
笛にする竹は、森町黒田の中野伊一郎さん寄贈によるものです。9月22日夜、中野さん宅にお願いに上がりました。
この中野さんは、昔戦国時代のつわものを思わせるような頑固一徹なお爺さんで、とてもお願いするには恐ろしい位のお爺さんでしたが、言挙げてお話し申し入れましたら、一の返事で承諾してくれました。
明くる日9月23日早朝、私たちは竹取に秋葉参道を黒田に急ぎました。場所は、中野さん宅より五百メートル先の山の中、鬱蒼として生い茂る孟宗竹が天にも届くかに見える、長い長い太い竹が何百本と聳え立っておりました。私たちの手では、とても倒せそうもありません。
幸いにして、地主の方のご協力にて大横笛になる竹が切られ会長宅に運ばれ、その後は毎夜雨の晩も風の夜も、会員交代にて魂込め制作に励み、10月25日夜、奉納笛として恥ずかしからぬ大横笛が誕生されました。思えば、竹取の9月23日より10月25日の間、よくやったとその労を労い合い、幸せ一杯を噛み締めました。
さて、いよいよ奉納の日が来ました。
実りの秋、森の祭りの三日前10月28日、この日は丁度雨だった。昇る石段も洗い清められ、木立の緑一層に美しく一千年前を思わせるような、森月宮司の神事、来賓、名士によるご祝辞いただき、恙なく神社拝殿に奉納を終えました。
因みに、大横笛は「常磐の笛」と命名されました。
昭和48年10月吉日 鈴木文夫
大横笛が三島神社に奉納された5日後の昭和48年11月2日、静岡新聞夕刊に掲載された新聞記事です。
以下、当日の新聞記事より引用
祭りばやしを後世に伝えるためにと、研究や普及活動に力を入れている周智郡森町の常磐会(鈴木文夫会長・会員四十六人)が、このほど特大の横笛をつくり、同町森の三島神社に奉納した。
結成三周年を記念して会員総出で製作したこの笛は、長さ三・一メートル、直径十五センチと普通の笛の約五倍はある"ジャンボ級"。「将来もしこの大横笛を吹く人が出た時、音がでないようでは恥になる」と取り組んだだけあって出来ばえは最高。
そろいのハッピ姿の会員が協力してつりあげ、同神社拝殿の正面、軒下に固定した。
「この笛が永久に残っていくように、祭りばやしも子々孫々まで伝えられるようがん張りたい」と会員たちは口々に話していた。
平成31年4月14日 森町三島神社にて
昭和48年10月28日、当時の常磐会会員40余名によって三島神社に奉納された常磐の大横笛。奉納から40数年の年月が経ち、方々に傷みが生じてきたことにより、修繕を行なう事になりました。
この日は、午前中から会員が三島神社に集まり、奉納されていた大横笛を一時降納。下記にあるように、同月16日からの大凧作りに併せて、笛の修繕作業を行ないました。
平成31年4月16日〜18日の3日間 場所:森町内・浦野モータースさん作業場にて
先日、三島神社から一時降納した大横笛の修繕作業を、浦野モータースさんの作業場をお借りして行ないました。
毎年この時期、5月5日に予定されている「ぶか凧揚げ」に備えての凧作りを行なっていて、今年は笛修繕も同時進行。
連夜、仕事帰り等の会員が集まり、磨き作業での汚れ落としから、破損部分の修復、塗り作業と、会員が協力し合って作業を行ないました。特に塗りの工程は下塗りから始まり、本塗りは3度の塗りを施して、経年劣化の症状が少しでも抑えられる対応を取りました。
そして下記にあるように、記念すべき「令和」の幕開けに合わせ、生まれ変わった大横笛のお披露目を行なうに至りました。
令和元年6月9日 森町三島神社にて
修繕作業のため一時降納していた常磐の大横笛。この度修繕作業が無事に完了し、三島神社に再奉納されました。
修繕に合わせて由緒書、製作に携わった当時の会員の名前書もリニューアル。
三島神社に訪れる際は、拝殿横に奉納されておりますので、生まれ変わった常磐の大横笛を参拝の後にでも是非ご覧になって下さい!